前回の記事では、ブリーチと黒染めを繰り返して地層のようなムラになってしまった方をなるべく均一な状態に整えて可愛い髪色にするお話をしました。
今日はブリーチと黒染めの繰り返しでは無く、純粋に黒染めをして残留してしまう場合どうするか、というお話です。
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黒染め履歴があるけど、なるべく白く、可愛いスタイルにしたい!
僕の元にもよくいらっしゃいます。
「黒染め履歴があるけどブリーチして綺麗な髪色にしたい!」
という方。
しかし、今時ちょっと調べればわかることですから、態々僕が書かなくとも多くの方がご理解して下さっているとは思いますが…、
基本的に、黒染めをすると希望の色にするのことが難しくなくなってしまいます。
とは言え、具体的に何故”黒染めをすると難しくなるのか”をご存知の方は少ないと思います。
そのご説明の前に、先ずそもそも黒染めを含むヘアカラー剤には何が含まれどんな反応をしているかのお話をば。
何故黒染めをすると難しくなるのか…
黒染めを含む所謂”普通のカラー剤”、正式にはアルカリカラー剤の染料には3種類の染料が使われています。
それぞれ、中間体・カプラー・直接染料と言います。
この3つのうち、中間体という染料は毛髪に対して酸化重合という強い結合をし、発色します。
逆に、髪の毛の色素や染料を壊して明るくするブリーチ剤。
これには勿論染料は一切含まれておらず、1剤のアルカリ剤・過硫酸塩に2剤の過酸化水素を混ぜることで、強い酸化反応を起こし髪の毛を明るくします。
ここで問題なのが、仮に酸化をプラスの反応だとすると、本来その反対のマイナスの反応は還元になります。
中学とか高校生の時の化学の授業で酸化・還元反応ってやりましたよね。
カラー剤は酸化で結合・発色するのですが、それを落とすと言われているブリーチ剤も”酸化”によって明るくしているわけで…。
本来、酸化の反対の反応は還元ですから、酸化で結合したものを酸化で分解しようだなんて土台無理な話なわけです。
黒染めも普通のカラーもそこまで差はない
ちなみにですが、黒染めではない普通のカラーでも、ホワイトっぽくしたい上ではあまり差はありません。
何故なら黒染めではない普通のカラー剤も中間体・カプラー・直接染料の組み合わせで出来ているから。
所謂黒染めの薬剤は、黒という状態にするために、つまり光が髪の毛を通過しないようにするために非常に濃い染料で作られています。
ですが、普通のカラー剤も色を付ける以上黒染めと同じように酸化重合や酸化による結合と発色をさせています。
そこに含まれている染料自体には正直大きな違いはありません。
違いがあるとしたら、染料の配合比率と濃度。
ですからホワイトヘアにしたい場合、黒染めは勿論普通のカラーすらもしていてはいけないということになるのです。
でも、カラーしててもブリーチすると明るくなるよね??
しかし、カラー履歴があっても実際には明るくなっていますよね。
それについて考えられる理由は
・元々残っていたメラニン色素が脱色された
・ブリーチのアルカリによる膨潤で、結合をしない直接染料が流出した
などが考えられます。
明るくなることにはなりますから、純白のリアルホワイツや余計な色味があると作れないシルバーやパステルトーンなど以外のお色…。
キチンと色味を出す鮮やかなお色や、ホワイト領域や透明感のあるベースを必要としないベージュやグレージュと言った比較的茶色に近いお色などは、大抵の場合問題なく作れます。
黒染めやカラー履歴があるからと言って、何も出来ないわけではありませんのでご安心くださいませね。
とは言え、基本的に残留する染料はカットによって物理的に切り落とさない限り残留し続けます。
ですから、ホワイトヘアにしたい場合やホワイトにできるベースが必要なお色にする場合はカラー履歴がないことが必須になるわけです。
黒染めやカラー履歴がある髪の毛にホワイトブリーチをするとどうなるの??
と、言葉でいくらお伝えしても、実際の状態を見てみないことにはなかなか伝わらないですよね。
なので、僕が以前に黒染めやカラー履歴のある方にホワイトブリーチをさせて頂いた際の実例をご紹介致します。
黒染め毛にホワイトブリーチをすると…
こうなります。
いい感じのオレンジですよね。
本当、どうしたもんかと頭を悩ませるくらい綺麗なオレンジです。
根元を見て頂くとわかる通り、本来だったらホワイトになってくれるくらいのブリーチをしています。
しかし、黒染めの染料が頑固に残るためにここまでしか明るくなりません。
普通のカラーの履歴がある髪の毛にホワイトブリーチをすると…
こうなります。
これは何も、黄色い領域でブリーチを止めたとか、こういう色にしたとか、そういうわけではなく。
普段僕がホワイトにするときのブリーチと同じことをやってこうなります。
勿論、黒染め履歴は一切ありません。
前回までは普通のカラー剤で、アッシュとかモノトーン系とかバイオレット系とか、本当に普通のカラーを2〜3ヶ月周期でされていた方です。
それでも、アルカリカラーに含まれる染料が黒染めも普通のカラーも変わらない以上、ホワイトブリーチをしてもこうなります。
勿論、普通のカラー剤の全てがこうなるわけではありません。
物によっては殆ど残留せずに明るくなってくれる物もありますし、逆にこのように頑固な残留をする物もあります。
それは、色によって変わる部分もあれば、色味に依存しない場合もあります。
こればかりは、メーカーさんがどういう染料をどういう分量で配合しているかを公表できない以上、僕らが正確にそれを把握する術はなく、経験で予測するしかありません。
ですから、”黒染めだから”とか”○色だから”という判断はできません。
これまでのカラーの履歴の中で、残留性の高い染料を多く含む薬剤で染められてしまっていると、黒染めや白髪染めでなくてもこうなってしまうわけです。
これ以上明るくすることはできないの??
「もっとブリーチをすれば明るくなるんじゃないの??」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、ブリーチを繰り返していき髪の毛が染料を保持できないほどのダメージを与えれば残留する染料を除去できるでしょう。
しかし、染料を保持できないほどのダメージを与えるということはそれ即ち髪の毛が髪の毛としての形状を保てなくなるということに他なりません。
そう言った無茶なブリーチはするべきではありませんし、僕は絶対にしたくありません。
何故なら僕は、綺麗な髪色は綺麗な髪の毛の上に成り立つ物と考えているからです。
どんなに綺麗なホワイトヘアでも、切れ毛と枝毛で山姥のようなボサボサだったら綺麗とは言えないですよね?
逆に、ツヤッツヤでサラッサラな状態だったら、どんなお色でも綺麗だなってなりますよね?
つまり、髪色の綺麗は、髪の毛の状態が綺麗で初めて成り立つ物。
ですから僕は、ブリーチによるダメージを極限まで抑えることに尽力していますし、無茶なブリーチは絶対にしないのです。
黒染めやカラー履歴を活かして可愛いくて楽しい髪色に
とまあ、後ろ向きな話ばかりしていても仕方ないですよね。
ですから僕は、黒染めやカラー履歴があってホワイトにはできない場合、そこからどう可愛い髪色にするかを考えています。
例えば先ほどの…、
こちらの方のように、根元は白くなるけど中間から毛先がオレンジっぽく残留してしまう場合。
こちらの方の場合、キッパリとホワイトは諦めてネイビー系に。
比較的残留している部分が少なかった内側はグレー系にさせて頂いて…、
こうなりました。
逆に、先ほどのような根元は白、中間から毛先はオレンジというのもそれはそれで可愛いと思います。
なので…、
こういうのも、スタイルとして一つありなのではないかな?って思います。
んで、これって言わば”ホワイト〜パステルオレンジへのグラデーション”なわけじゃないですか。
ということは、これを活かして…、
ホワイト〜パステルオレンジになるのを利用して、
ホワイト〜パステルオレンジ〜オレンジのグラデーションに、イエローの筋を加えて。
こういうのも、可愛いですよね。
メニュー:ホワイト・ブロンド(¥20,000)+Hana式トリートメント(¥5,000)
所要時間:5h
メニュー:Hanaカラー_full(¥25,000)+Hana式トリートメント(¥5,000)
所要時間:6h
といった感じで。
黒染めやカラー履歴でホワイトに出来なくなってしまうのは事実です。
しかし、そういった履歴から生まれる、残留があるからこそできるこういったお色も、視点を変えれば凄く可愛くできる要素だと思います。
オレンジや黄色味を避ける方は多いですが、オレンジや黄色が汚い色ではないですし、上手く活かしてあげれば、ダメージレスで且つ可愛い髪色にできます。
勿論、リタッチを繰り返しながら伸ばして切手を繰り返していけば、ゆくゆくは綺麗なホワイトにもできます。
それまでの間、根元から毛先まで綺麗なホワイトに出来ないなら出来ないで、その時にしか出来ないお色を楽しんで頂けたらと思います。
思い通りにいかないことも多々ありますが、その中でも目一杯楽しんで頂けるようなカラーを出来たらと思うので、是非ご相談ください。
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